●第4日(8月28日)
女子棒高跳のイシンバイェワ
世界新での連覇に挑戦
日本短距離界のエースで、2003年パリ大会男子200m銅メダリストの末續慎吾(ミズノ)がいよいよ今大会初登場。今季の自己最高記録20秒20はエントリー選手中6番目で、午前中の一次予選、夜の二次予選とも問題なくクリアしていくだろう。ただし、二次予選の結果が準決勝でいいレーンに入れるかどうかに関わるだけに、力の抜けない日になる。また、100mに続き、200mで今大会2つ目の金メダルを狙うタイソン・ゲイ(米国)も観衆を大いに沸かせてくれるはずだ。
そして、夜の部の注目は女子棒高跳の決勝。2004年のアテネ五輪、2005年のヘルシンキ世界陸上をいずれも世界新記録で制しているロシアの妖精<Gレナ・イシンバイェワが世界大会3連勝と自身21回目の世界記録更新に挑む。26日の予選では、予選通過記録の4m55を軽々と1回でクリアしたイシンバイェワ。本気で臨むで決勝では、大阪の夜空に華麗な舞を見せてくれるだろう。

この日の夜は、男子400mハードルを含め計6種目の決勝が行われる。
●第5日(8月29日)
男子200mの末續が
2大会ぶりの決勝進出に挑む
大会中日、8月29日には、午前の部の男子110mハードル予選に世界記録保持者、劉翔(中国)が登場。余裕を持ったハードリングで自己の調子を確認するだろう。そして、夜の部は、日本の末續がファイナル進出を目指す男子200m準決勝が一番の注目。巧みなコーナーワークで、前半の走りは世界でもトップクラスと言われる末續。後半の減速を最小限にしのげば決勝進出の可能性は一層高まる。
さらに、女子5000m予選では爆走娘&沁m加代子(ワコール)が、大会初日の10000m決勝に続いて登場。3日後の決勝を目指してアフリカ勢らとどんな争いを繰り広げるか。
決勝種目は男子1500m、女子400mなど6つが開催される。
●第6日(8月30日)
タイソン・ゲイ2冠なるか
注目の男子200m決勝
第6日は全日程を通じて唯一、午前中の競技がなく、夜の部だけ。この日最終種目の男子200m決勝のスタートラインに日本の末續が立っていれば会場は大いに盛り上がるのは間違いない。米国のタイソン・ゲイとウォレス・スペアモン、ジャマイカのウサイン・ボルトなど強豪がひしめくが、2大会ぶりのメダル獲得、夢の19秒台突入を目指した末續の熱走に期待したい。また、世界歴代2位の記録(19秒62)を保持するゲイらが、1996年にマイケル・ジョンソン(米国)が打ち立てた世界記録(19秒32)にどこまで迫れるかも注目だ。

このほか、男子棒高跳の予選には、前回のヘルシンキ大会に続く入賞に期待がかかる澤野大地(ニシ・スポーツ)が登場する。2日後の決勝進出を目指して、どんな跳躍を見せるか楽しみだ。
●第7日(8月31日)
男子400mと110mハードルに
世界新記録誕生の期待
第7日は6種目の決勝が行われるが、そのうち男子の400mと110mハードルの2種目は世界新記録の誕生が期待される。
400mはアテネ五輪、ヘルシンキ世界陸上とビッグゲーム2連覇中で、今年8月上旬に43秒50の自己新記録をマークするなど絶好調のジェレミー・ウォリナー(米国)がお目当ての選手。いまや無敵を誇るウォリナーは、大学の先輩であり、現在は彼の代理人も務めているマイケル・ジョンソンが1999年のセビリア世界陸上で樹立した43秒18の世界記録の更新だけでなる、前人未踏の42秒台突入にもチャレンジする。走路の反発が強く、世界屈指の高速トラック≠ナある長居陸上競技場は、スタジアムの構造上、400mの選手は1周追い風に後押しされるケースが多い。絶好の条件に恵まれれば、歴史的大記録の誕生を目撃できるかもしれない。一方の110mハードルは12秒88の世界記録を保持する中国の劉翔を中心とした争い。劉翔はアテネ五輪王者だが、世界陸上は2003年パリ大会が3位、2005年ヘルシンキ大会が2位で、まだ金メダルを手にしていない。今大会は記録より勝負を重視しているようだが、5月開催の大阪グランプリで4連勝している劉翔にとって、長居競技場は勝手知ったるスタジアム。金メダル=世界新ということも十分考えられる。

また、110mハードルには世界歴代2位の12秒90を保持するドミニク・アーノルド(米国)、今季12秒95の自己新記録をマークしている全米選手権王者のテレンス・トランメルなど強豪がひしめいており、劉翔以外の選手が優勝、世界記録をさらってしまうこともあり得る。それだけ興味の尽きない種目だ。
この日、もう1つ見逃せないのが男子4×100mリレーの予選。100mで準決勝まで駒を進めた朝原宣治、200mの末續慎吾を軸にした日本チーム独特のアンダーハンド・パスがぴたりと決まれば決勝進出の可能性は高い。
●第8日(9月1日)
棒高跳の澤野、大阪の夜空に舞え!
男子400mリレーでニッポン熱走
大会もいよいよ大詰めが近づき、世界陸上は世間の関心事になっていることだろう。
この日の夜は男子棒高跳決勝が注目の的。日本の澤野大地(ニシ・スポーツ)がヘルシンキ大会に続く2大会連続入賞、そして密かにメダル獲得を目指す。世界の上位レベルは拮抗しており、5m83の自己記録を保持する澤野が、自己新記録となる5m85あたりの高さを1回で成功すればメダルをぐっと引き寄せられるだろう。また、女子5000m決勝は、エチオピア勢同士による対決が、世界的にも注目されている。大会3連覇がかかるティルネシュ・ディババが10000mと合わせて2大会連続の2冠獲得を成し遂げるか。アテネ五輪女王のメセレト・デファーが、この種目の世界記録保持者としての意地を見せるか。残り1周のスプリント合戦は見逃せない。彼女らの競り合いに、日本の福士加代子(ワコール)が加わっていれば、スタジアムは大いに沸くだろう。
そして、この日の最終種目が男子4×100mリレーの決勝。アテネ五輪4位で、世界陸上では入賞の常連である日本が、悲願のメダル獲得を目指す。不動のアンカーである35歳の朝原にとっては、競技人生の集大成となるステージ。米国、ジャマイカ、英国ら強豪とどんな争いを繰り広げるか注目される。
●最終日(9月2日)
ニッポン女子マラソン陣に
メダル獲得の期待
猛暑の大阪決戦も、いよいよ最終日。この日は午前7時から女子マラソンが行われる。この種目は、過去10回の世界陸上のうち6大会でメダル獲得、金メダルも2つ手にしている日本のお家芸≠ナあるのは言うまでもない。前回のヘルシンキ大会で6位に入賞している原裕美子(京セラ)、2001年エドモントン大会で銀メダル、2004年アテネ五輪で5位に入賞している土佐礼子(三井住友海上)の2枚看板を軸に、日の丸を背負った5選手がどんな走りを見せるか。初日の男子マラソンではワールドカップの団体戦こそ3連勝した日本だが、個人では尾方剛(中国電力)の6位が最高だった。女子には、ぜひともメダルを獲得してほしい。
夜の部は、いずれも決勝の7種目が開催される。記録的に興味があるのは、8月に入ってブランカ・ヴラシッチ(クロアチア)世界歴代2位タイの2m07を打ち立てた女子走高跳。この種目の世界記録は、1987年ローマ世界陸上でスタフカ・コスタディノワ(ブルガリア)が打ち立てた2m09で、今大会期間中に20周年≠迎えた。その偉大な記録を、193cmと長身の23歳・ヴラシッチが更新できるか注目される。
そして、男子4×400mリレーが大会のフィナーレ。前夜の予選を突破し、ここに日本チームが残っていることを願いたい。2003年パリ世界陸上で7位、2004年アテネ五輪で4位に入賞しながら、前回のヘルシンキ世界陸上では決勝進出を逃した日本。地元でのリベンジに燃える選手たちの力走に期待したい。
世界の超人たちが肉体の限界に挑む世界陸上。競技場で迫力満点のパフォーマンスを目の当たりにして、世界のすごさを堪能するのはもちろんいいが、どうせ観戦するなら、自分自身も十二分に楽しみたいもの。そのための心得、コツなどを伝授したい。
その1 応援グッズ
応援するのに手ぶらでは寂しい。そこで、応援グッズを競技場に持ち込もう。一般的に使われるのは国旗および小旗、うちわ、扇子、応援ボード、横断幕など。ごひいきの選手を応援するには、よりオリジナリティーのあるものが選手には好まれるだろう。「ガンバレ○○!」などと書かれた応援ボードや横断幕を持っていれば、テレビのカメラマンも注目してくれるはず。あなたの応援が日本全国に、いや国際映像で全世界にテレビ放映されるかもしれない。テーマは、「より目立つこと」だ。

その2 応援スタイル
応援する国、日本であれば日の丸カラーを意識した服装で会場に行こう。白いシャツでもいいし、赤いシャツでもいい。また、フェイスペインティングもいいだろう。過去の世界陸上でも、地元選手を応援する熱烈ファンの姿がたくさん見られた。我が日本も負けてはいられない。特になにわの熱烈ファン≠ノは、ガツンとした服装で会場入りしてほしい。こちらのテーマも、「より目立つこと」だ。

その3 応援方法・ウェーブ
いつから始まったのか定かではないが、スタジアムの観客みんなが力を合わせて行うのがウェーブ=Bその場で立ち上がって、手を上げる。それが連なれば人の波≠ェでき、スタジアム1周を波が走る。それがウェーブだ。このウェーブは、1990年代がブームであり、1991年の東京大会では連日、競技が始まる前や競技の合間にウェーブが起こった。
近年はブームが去ったと思いきや、2003年のパリ大会や2007年のヘルシンキ大会でもウェーブは起きていた。ウェーブを起こすかどうかは観客の熱意次第だが、その火付け役は地元ファンが担うしかない。一般的には第2コーナー、1500mのスタート付近、ハンマー投や円盤投のゲージの背後にいる観客がウェーブの火付け役≠ノなっている。

その4 応援方法・手拍子
一般的な応援方法として手拍子≠ェあげられる。これは跳躍種目の選手を応援するための定番だ。1980年代に活躍した男子三段跳の元世界記録保持者、ウイリー・バンクス(米国)がルーツと言われるが、人は誰でも観衆の注目度が高いほど、高いパフォーマンスを発揮できるもの。皆さんの手拍子で、選手に大きなエネルギーを与えようではないか。
日本を代表する男子棒高跳の澤野大地選手、男子走高跳の醍醐直幸選手、女子走高跳の池田久美子選手らも皆さんの手拍子を待っている。日本人選手だけでなく、外国人選手にも手拍子をしてあげよう。場内の盛り上がりが、世界新記録の誕生につながるかもしれないし、そしてあなたは「世界新記録誕生の目撃者」になるのだ。注意点は1つ。選手の動きに合ったリズムで手拍子をすること。「最初はゆっくり、助走が始まったら徐々に早く」がコツ。
その5 応援方法・声援
跳躍以外の種目で手拍子をするとしたら、5000mや10000mの長距離しかない。その他の種目を応援するにはどうすればいいか。「う〜ん?」……。「行け〜!」「抜け〜!」「○○ガンバレー!」など声を張り上げて声援する、いいパフォーマンスをした後は大きな拍手をしたり、「○○いいぞ〜!」と叫ぶしかないだろう。男子ハンマー投の室伏広治選手は、アテネ五輪で金メダルを獲得した時、「みんなの声援がひしひしと伝わってきて、1人で戦っているんじゃない、と思えて心強かった」と話していた。室伏選手は「これだ!」と思ったいい投てきをした直後には「ウォー!!」という雄叫びを挙げる。その時、観客の皆さんも力の限り「行け〜!」と叫んでほしい。あなたの叫びが、室伏選手に世界陸上初の金メダルをもたらすかもしれない。
その6 応援方法・最後に
どの種目でも声援を送るタイミングというものがある。短距離のスタート前や投てき選手の投げ始める前など神経を集中する時は、静かに見守ってあげるのが選手のため。しかし、それ以外の場合は、絶え間なく応援していいだろう。
最後にひとつ、アドバイスを。応援のスタイル、方法も「恥じらいを捨てよう!」。ドを超えたスタイルや応援方法も、みんなでやればこわくない!
世界陸上★美女アスリート #1棒高跳
エレナ・イシンバイェワ(ロシア)
「強いものは美しい」。その言葉にぴったりなのが、棒高跳のエレナ・イシンバイェワだ。2003年7月以降、室内も含めて19回も世界記録を更新。04年アテネ五輪(4m91)、05年ヘルシンキ世界陸上(5m01)をいずれも世界新で制するなど、大舞台でも強さを発揮してきた。大阪世界陸上でも、世界新での連覇達成が目標だ。
この8月3日で25歳になったが、「恋人は陸上競技」ときっぱり。「24時間、陸上競技にどっぷり浸かっている」という地道な生活を経て、その成果をステージ(競技場)で十二分に表現する。この夏、大阪で、ロシアの妖精≠ヘどんな輝きを放つか。
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世界陸上★美女アスリート #23000m障害物
辰巳悦加(和光アスリートクラブ)
所属企業もない苦しい競技活動だが、クラブチームで地道な努力を重ねて夢をつかんだ。3000m障害物3度目のレースとなった今年の日本選手権で2位に食い込み、B標準も突破。まるでシンデレラ≠フようなサクセス・ストーリーを歩んで、見事に日本代表の座を射止めた。
苦境の中にあっても、さわやかな笑顔を絶やさない25歳。「自分ががんばることでみんなに喜んでもらえる、それが一番」と話し、支えてくれるコーチ、チームメイトのためにも大阪での快走を誓う。次はどんな物語を作ってくれるのだろうか。
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世界陸上★美女アスリート #3長距離
ティルネシュ・ディババ(エチオピア)
エチオピアの農村で生まれた少女は、首都・アディスアベバに出て行く手段として陸上競技を志した。それから数年後、弱冠17歳で2003年パリ世界陸上の女子5000mに優勝、全種目を通じて史上最年少世界チャンピオンになったのがティルネシュ・ディババだ。前回のヘルシンキ世界陸上では5000mと10000mの両種目を制し、男子も含めて大会史上初の長距離2冠を達成した。
普段は物静かな性格だが、戦いのステージに立つと野生の闘争心に火がつく。21歳のエチオピアン・ビューティーは大阪でも女王の座を守り、表彰式でとびきりの笑顔を見せるか。
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世界陸上★美女アスリート #4短距離
メリッサ・バーバー(米国)
その走りのパワフルさとは裏腹に、目を見張る艶やかな美貌。将来はビューティーサロンを開くのが夢だという。
メリッサ・バーバーは100mから400mまでをこなせるマルチスプリンター。米国リレーチームに欠かせない存在で、03年パリ世界陸上では4×400mリレー、前回のヘルシンキ世界陸上では4×100mリレーで、どちらも1走として金メダルに貢献した。個人でも05年世界室内60m優勝のキャリアを誇る。今回の世界陸上への代表入りは不明だが、大阪に姿を見せれば、米国リレーの要として輝きを放つだろう。
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世界陸上★イケメン・アスリート #1男子棒高跳
ダニー・エッカー(ドイツ)
母親は1972年ミュンヘン五輪の走幅跳で金メダル、七種競技でも銀メダルを獲得して地元のヒロインになった赤毛≠フハイデ・ローゼンダール。父親は米国の元バスケットボール選手、ジョン・エッカー。そんな血筋の良さも話題になる30歳のイケメン棒高跳選手がダニー・エッカーだ。
192cm、80kgの恵まれた身体を生かし、2001年に室内で6m00をクリア。世界大会の入賞の常連選手だが、メダルは99年の世界室内での銅のみ。しかし今年度は欧州室内で初のメジャータイトルを獲得。大阪では、一気に世界の頂点を目指す。
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世界陸上★イケメン・アスリート #2男子走高跳
醍醐直幸(富士通)
182cm、64kg。世界の走高跳界では小柄な体型だが、持ち前のバネを武器に昨年度、13年ぶりの日本新記録となる2m33を樹立した醍醐直幸。それは世界ランキング4位タイの大記録でもあり、2度目の世界陸上となる大阪では、入賞はもちろん、密かにメダル獲得を目指している。今が旬の26歳。クールなイケメン・ジャンパーの、バーを越えた後の笑顔でのガッツポーズを見逃すな!
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世界陸上★イケメン・アスリート #3やり投
アンドレアス・トルキルドセン(ノルウェー)
04年のアテネ五輪、22歳の若さで金メダルに輝き、世界の頂点に立った男子やり投のアンドレアス・トルキルドセン。昨年もワールド・アスレティックス・ファイナルや欧州選手権など主要大会の勝利を重ね、その端正なマスクには今や王者としての風格すら漂う。
自身のキャリアで残すタイトルは世界陸上のみ。前回は銀メダルにとどまっただけに、大阪への意気込みは強い。ライバルは多いが、譲るつもりはさらさらない。優勝ラインと予想される90mとなると、フィールドの芝生をほぼ横断するほどの飛距離。スカンジナビアの貴公子≠ェ描くやりの放物線は、さぞ美しいことだろう。
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世界陸上★イケメン・アスリート #4男子800m
横田真人(慶大)
立教池袋高時代にインターハイで優勝。慶大進学後はいきなり日本選手権を制し、今年も連覇を飾って見事、地元開催の世界陸上代表の座を射止めた横田真人。日本勢が男子800mで世界陸上に出場するのは12年ぶり。素顔はいまどきの19歳だが、趣味のサーフィンは封印中。陸の王者′c応が誇る気鋭の中距離ランナーは、陸上競技に全身全霊を傾けている。
日本人のメダル獲得数は17個(金3、銀5、銅9)
陸上ファンのみならず、“世界陸上”がもっとも盛り上がりを見せる瞬間は二つ!世界新記録誕生と日本人選手のメダル獲得の瞬間であることは間違いない事実だろう。
この瞬間は、他のどの競技でも味わえない、特別な瞬間である。
前週のコラムでは、91年の東京大会を振り返えりましたが、今週は、93年のシュツットガルト(ドイツ)〜2005年のヘルシンキ大会までを、世界記録と日本人選手のメダル獲得に焦点を当てて、ダイジェストで振り返ります。
地元開催となる大阪世界陸上で、もっとも注目が集まるのは、やはり、日本人選手が、いくつのメダルを獲得できるかだろう。
前回のヘルシンキ大会までの世界陸上で、日本人が獲得したメダルは合計17個。その内訳は、マラソンが11個(金3、銀4、銅4)で、大半を占めているものの、2001年のエドモントン(カナダ)以来、3大会連続で、マラソン以外の競技でもメダルを獲得している。
大阪世界陸上にも出場が予定されている室伏(銀1、銅1)、為末(銅2)、末續(銅1)はもちろんのこと、走幅跳の池田久美子や男子棒高跳の澤野大地など、今まで、世界陸上の舞台で、メダルとは無縁だった競技でのメダル獲得も期待されている今大会。
特に97年アテネ大会の女子マラソンで鈴木博美選手が金メダルを獲得して以来、10年ぶりの金メダル獲得がこの夏、大阪・長居で見られるかもしれない。
■第4回 シュツットガルト大会(1993年8月13日〜22日) ドイツ・シュツットガルト
隔年開催<Xタート、5種目で世界記録誕生
浅利が日本女子初の世界大会制覇
オッティ 悲願の金メダル
オリンピックと同様に4年ごとに開催されてきた世界陸上が、この第4回から1年おきの開催に変更された。参加したのは過去最多の187の国と地域。女子三段跳が新種目として加わり、全44種目となった。
男子110mハードルでコリン・ジャクソン(英国)が世界記録を0.01秒塗り替える12秒91の快走、新登場の女子三段跳ではアンナ・ビリュコワ(ロシア)が15m09の世界新ジャンプを披露するなど、世界記録がタイ記録を含め5種目で誕生する盛況だった。
日本にとっても輝かしい大会となる。女子マラソンで浅利純子(ダイハツ)が金メダルに輝いたのだ。オリンピックを含めても日本女子陸上界初の快挙を果たした浅利に、惜しみない賞賛が送られた。また、安部友恵(旭化成)も、見事に銅メダルを手にした。
女子100mではゲイル・ディヴァース(米国)とマリン・オッティ(ジャマイカ)が大接戦を演じ、10秒816と10秒820というミクロの差でディヴァースが優勝を果たした。敗れたオッティだが、200mを制覇。個人種目では、過去の世界陸上と五輪で獲得した銅メダルが8個というブロンズコレクター≠ノとって、これが初めて金メダルだった。
しかし、それ以上に目を引いたのが中国の躍進だった。女子3000mは曲雲霞の金をはじめ、メダルを独占。1500mは劉東、10000mは王軍霞が並みいる欧米の強豪に圧勝、「馬軍団」が世界陸上を席巻した。

●誕生した世界新記録
男子110mH C.ジャクソン(英国) 12秒91
男子4×100mR 米国 37秒40=タイ記録
男子4×400mR 米国 2分54秒29
女子400mH S.ガネル(英国) 52秒74
女子三段跳 A.ビリュコワ(ロシア) 15m09
●日本人選手の獲得メダル
女子マラソン 金メダル 浅利純子
女子マラソン 銅メダル 安部友恵
■第5回 イエテボリ大会(1995年8月5日〜13日) スウェーデン・イエテボリ
エドワーズが夢の18mジャンプ
マイケル・ジョンソン 200m&400mの2冠
北欧屈指の港湾都市に191の国と地域から約2000人が参加して開催された。種目の増減はないが、女子3000mは5000mに変更されている。
この大会の主役は、男子三段跳のジョナサン・エドワーズ(英国)。1回目に史上初の「18m超」となる18m16、そして2回目には18m29まで世界記録を伸ばし、スピードあふれる美しい跳躍とあわせて、観衆を大いに魅了した。女子の三段跳でも世界新記録が誕生し、イネッサ・クラヴェツ(ウクライナ)が従来の記録を41cmも塗り替える15m50の大ジャンプを披露した。
また、マイケル・ジョンソン(米国)が、カール・ルイス(米国)の後継者としてスーパースター≠フ称号を手にした大会でもあった。五輪を含む世界大会で、史上初の男子200m、400m2冠の金字塔を打ち立てたのだ。ジョンソンはアンカーを務めた4×400mリレーでも勝ち、3個の金メダルを獲得した。
快挙がもう一つ。男子棒高跳で世界記録をほしいままにしてきたセルゲイ・ブブカ(ウクライナ)が、世界陸上5連覇を達成した。五輪では4連覇が最長。前人未到の世界大会連覇記録が生まれた。

●誕生した世界新記録
男子三段跳 J.エドワーズ(英国) 18m29
女子400mH K.バッテン(米国) 52秒61
女子三段跳 I.クラヴェツ(ウクライナ) 15m50
■第6回 アテネ大会(1997年8月1日〜10日) ギリシャ・アテネ
ブブカ 前人未到の6連覇
鈴木が女子マラソンで金メダル
オリンピックの第1回大会を開催したアテネ(ギリシャ)に、198ヵ国・地域が集った。種目に増減はないが、1985年から行なっていたマラソンのワールドカップを吸収。マラソンのみ1国5名までの参加が認められ、国別対抗の団体戦に対してもメダルが授与されることになった。またこの大会から、前回優勝者に国際陸連推薦枠(ワイルドカード)が与えられ、1種目1国3名の枠とは別に出場できるように変更した。
残念ながら、世界陸上史上初めて世界記録が誕生しなかった。だが、セルゲイ・ブブカ(ウクライナ)の男子棒高跳6連覇という大偉業が成し遂げられた。19歳で第1回大会を制し、それから33歳までの長きにわたって世界のトップであり続けた証である。また、男子短距離のモーリス・グリーン(米国)、女子短距離のマリオン・ジョーンズ(米国)、男子中距離のヒシャム・エル・ゲルージ(モロッコ)ら、次代を担うスターも誕生した。
さらに、日本女子が大躍進し、女子マラソンで鈴木博美(積水化学)が金メダルを獲得。女子10000mでは千葉真子(旭化成)が銅メダルに輝き、マラソン以外で日本人初の世界陸上メダリストとなった。

●誕生した世界新記録
なし
●日本人選手の獲得メダル
女子マラソン 金メダル 鈴木博美
女子10,000m 銅メダル 千葉真子
■第7回 セビリア大会(1999年8月20日〜29日) スペイン・セビリア
ジョンソン 念願の世界新
グリーンが史上初の100m&200m制覇
過去最多202の国と地域が参加。女子棒高跳とハンマー投が新設されて全46種目に。女子競歩は10kmから20kmとなり、女子やりの規格も1986年の男子と同様に飛距離を抑えるものに変更された。
大会の主役は、何と言っても男子400mのマイケル・ジョンソン(米国)だ。これまで世界陸上、オリンピックで何個も金メダルを取り、200mの世界記録も手に入れてきた彼にとって、唯一足りないものが400mの世界記録。そして、その瞬間がついに訪れた。従来の記録を0.11秒破る43秒18。大会4連覇をこれ以上ないかたちで飾った。ジョンソンは4×400mリレーでも優勝に貢献。通算9個目の金メダルを手にし、カール・ルイス(米国)の8個を超え、世界陸上史上最多金メダル獲得者となった。
皇帝<nイレ・ゲブルセラシェ(エチオピア)の10000m4連覇、モーリス・グリーン(米国)の史上初の男子100m・200m2冠(4×100mリレーも制して3冠)など、連日35度を超える猛暑の中でも、世界の超人たちは素晴らしいパフォーマンスを披露した。

●誕生した世界新記録
男子400m M.ジョンソン(米国) 43秒18
女子棒高跳 S.ドラギラ(米国) 4m60(タイ記録)
●日本人選手の獲得メダル
女子マラソン 銀メダル 市橋有理
男子マラソン 銅メダル 佐藤信之
■第8回 エドモントン大会(2001年8月3日〜12日) カナダ・エドモントン
室伏、為末が日本男子初の快挙
ゲブルセラシェ、ジョーンズ敗れる大波乱
大会は、初めてアメリカ大陸に上陸。参加国・地域は189と少し減り、世界記録も生まれなかったが、各種目で熱戦が展開された。
この大会は、王者・女王が明暗を分けた。男子マラソンで、前年のシドニー五輪覇者、ゲザハン・アベラ(エチオピア)が1秒差の大接戦を制して、史上初の世界大会連覇を達成。男子円盤投ではラルス・リーデル(ドイツ)が通算5個目の金メダルを獲得。1991年から4連覇の後、前回3位と中断したが、復権を果たした。男子走幅跳ではイヴァン・ペドロソ(キューバ)が4連覇を果たした。
波乱は、まず男子10000m。5連覇を狙ったハイレ・ゲブルセラシェ(エチオピア)がチャールズ・カマシ(ケニア)に不覚を取り、3位に甘んじた。女子100mではこの種目42連勝中のマリオン・ジョーンズ(米国)がザンナ・ピントゥセヴィチ(ウクライナ)に競り負け、大会3連覇を逃した。
日本男子にとっては歴史的な大会となった。男子ハンマー投で室伏広治(ミズノ)が銀メダルを獲得し、日本投てき界に世界大会初のメダルをもたらす。そして男子400mハードルで為末大(法大)が銅メダル、日本男子トラック初めてのメダリストとなった。

●誕生した世界新記録
なし
●日本人選手の獲得メダル
男子ハンマー投げ 銀メダル 室伏広治
女子マラソン 銀メダル 土佐礼子
男子400mハードル 銅メダル 為末大
■第9回 パリ大会(2003年8月23日〜31日) フランス・パリ
末續が歴史的3位、日本過去最多のメダル4個
エル・ゲルージ4連覇、ベケレが新皇帝¥P名
フランス・パリの郊外に位置するサンドニで開催。198の国と地域から集まった選手たちに、連日7万人の大観衆が声援を送った。
男子1500mでヒシャム・エル・ゲルージ(モロッコ)が4連覇を達成。男子110mハードルのアレン・ジョンソン(米国)が4度目の優勝と、王者が貫禄を見せた。
一方で世代交代≠熕i行。象徴的だったのが男子10000m。ケネニサ・ベケレ(エチオピア)が母国の偉大な先輩、ハイレ・ゲブルセラシェに勝利して金メダルを獲得。新皇帝≠フ座に就いた瞬間だった。また、男子5000mでベケレとエル・ゲルージをまとめて倒したエリュード・キプチョゲ(ケニア)は18歳と299日、女子5000mに勝ったティルネシュ・ディババ(エチオピア)は17歳と333日。ジュニア2人の優勝は世界中を驚かせた。
日本勢は過去最多4つのメダルを獲得。男子200mで末續慎吾(ミズノ)が銅メダル、短距離種目で初のメダリストとなる歴史的快挙達成。男子ハンマー投の室伏広治(ミズノ)は3位に入り、2大会連続メダル。女子マラソンでは野口みずき(グローバリー)の銀に続いて千葉真子(豊田自動織機)が、97年10000m以来の2度目の銅メダルに輝いた。

●誕生した世界新記録
男子20kmW J.ペレス(エクアドル) 1時間17分21秒
男子50kmW R.コジェニョフスキ(ポーランド) 3時間36秒03秒
●日本人選手の獲得メダル
女子マラソン 銀メダル 野口みずき
男子ハンマー投げ 銅メダル 室伏広治
男子200m 銅メダル 末續慎吾
女子マラソン 銅メダル 千葉真子
■第10回 ヘルシンキ大会(2005年8月6日〜14日) フィンランド・ヘルシンキ
最も注目を集めたのが女子棒高跳のエレナ・イシンバイェワ(ロシア)だった。大会直前の7月に女子選手として初めて5mの大台に到達。この大会でも当然のように世界記録更新を期待され、それに見事に応える5m01をクリア。世界陸上初優勝に花を添えた。
男女スプリントは米国が席巻。アテネ五輪男子100mの王者、ジャスティン・ガトリンが100mと200mの2冠。男子400mもアテネの覇者、ジェレミー・ウォリナーが圧勝した。200mでは表彰台を独占。女子も100m、200mで優勝を飾った。
このほか、ティルネシュ・ディババ(エチオピア)が女子5000m・10000mを制覇。男女を通じて初の長距離種目2冠を達成した。ラシド・ラムジ(バーレーン)が男子800mと1500mの2冠という、世界陸上では初、五輪も含めると41年ぶりという快挙を遂げた。
日本勢は前回と同じ入賞8と活躍。男子400mハードルで為末大(APF)が2大会ぶり2度目の銅メダルを獲得。男子マラソンの尾方剛(中国電力)も銅メダルを手にした。

●誕生した世界新記録
女子20kmW O.イワノワ(ロシア) 1時間25分41秒
女子棒高跳 Y.イシンバイェワ(ロシア) 5m01
女子やり投 O.メネンデス(キューバ) 71m70
●日本人選手の獲得メダル
男子400mハードル 銅メダル 為末大
男子マラソン 銅メダル 尾方剛
追加召集されたメンバーは下記のとおり。
◆男子
短距離--------------------------------------------------------
小島茂之(アシックス) 佐藤光浩(富士通) 堀籠佳宏(富士通)
長距離--------------------------------------------------------
前田和浩(九電工) 松宮隆行(コニカミノルタ)
◆女子
短距離--------------------------------------------------------
石田智子(長谷川体育施設) 渡辺真弓(ナチュリル) 木田真有(ナチュリル)
長距離--------------------------------------------------------
脇田茜(豊田自動織機)[補欠]


